平成21年度 厚生労働省社会福祉推進費補助金事業による研究報告書 介護福祉士の専門性の質的評価と活用に関する研究事業 報告書(概略版)平成22年3月 研究結果(要旨)

5.研究結果(要旨)

1.研究の概要

本研究では、介護福祉士の行う介護の質に関する評価指標として、「介護福祉士の介護実践過程の評価項目」を開発することで、介護の専門性及び介護の質の向上について提案することを目的とした。本研究においては、以下の4点を実施した。

2.調査結果の概要

(1)文献レビュー、(2)フォーカスグループインタビュー、(3)評価項目の検討・調査票作成、(4)作成した調査票に基づくプレテストと、段階的にさまざまな研究方法を系統立て実施した。

(1)文献レビュー表12

文献レビューは、「目的、対象、調査手法・分析手法、主な結果、ケアの質に関する考察・示唆、評価指標」の項目を設定し、一覧表に整理し、データベース化した。文献レビューにあたっては、本研究テーマに基づき「介護福祉士」「専門性」「質評価」を視点とした。

その結果、次の3点が明らかになった。

  1. 介護の「専門性」と「介護の質」を同時に研究テーマとする研究はなかった。
  2. 介護の専門性は「価値(倫理)」「知識」「技術」で整理が可能である。
  3. 介護福祉士が日常実践している介護実践過程にこそ、価値(倫理)・知識・技術の3つの視点が統合された専門性が表れる。

(2)フォーカスグループインタビュー表3

介護福祉士の行う介護の専門性を価値(倫理)・知識・技術から見ることとし、その専門性を介護の実践場面から把握するために「食事」「排泄」「入浴」の介護場面をテーマに、全国11ヵ所でフォーカスグループインタビューを実施した。対象は、介護保険施設(特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型医療施設)に勤務し、介護福祉士有資格者で、介護を主とした業務に従事する常勤職員53人(有意抽出)とした。

  1. 各研究グループの一文一義語を一記録単位とし、データとなる逐語録を「フォーカスグループインタビュー記録まとめ表」の項目に沿って整理し、それらの記録が「価値観(倫理)面」「知識面」「技術面」に該当するか否かの検討を行った。11グループの逐語記録件数は、総計2304件であった。「価値観(倫理)面」「知識面」「技術面」に該当する記録件数は、それぞれ700件を超えていた。
  2. 「反復性」「個別性」「具体性」「普遍性」の観点を重視しながら、逐語録から「評価指標となり得ると考えられる項目」を抽出した。抽出された総計772件を整理した結果、「介護実践過程の評価項目案」として82項目に整理できた。

(3)「介護福祉士の介護実践過程の評価項目」検討表4

「介護実践過程の評価項目案」82項目に加え、文献研究の結果から17項目を追加し、「介護福祉士の介護実践過程の評価項目」99項目を決定した。

(4)プレテスト

介護保険施設に勤務する介護福祉士230人を対象に、調査項目の見直しを検討するためにプレテストを実施した。(調査方法は、無記名の自記式質問紙調査票を郵送配布・郵送回収。有効回答率57.8%。有意抽出だったが、回答を得た対象者は、無作為抽出で実施した日本生活支援学会実施の平成20年度調査14)の介護福祉士の属性と同様の傾向であった。)

1)介護福祉士の概要

2)「介護福祉士の介護実践過程」に関する自己評価

介護福祉士自身が日頃行っているケアに対し、どの程度実施しているかについて<ケアの実践の程度>と、どの程度重要と考えているかについて<ケアの重要度>を尋ねた。

3)<ケアの実践の程度>と<ケアの重要度>のクロス集計による分析表5

<ケアの実践の程度>と<ケアの重要度>の平均値を考慮し、各項目を(1)重要度高群・実践度高群、(2)重要度高群・実践度低群、(3)重要度低群・実践度高群、(4)重要度低群・実践度低群の4つに分類し、その特徴をみた。

4)介護福祉士の専門性として重要と考える内容

介護福祉士の専門性として重要と答えた内容を見ると「66.利用者のわずかなサイン(視線、表情、仕草の変化)をとらえて対応している」(27.8%)が最も多く、次いで「51.利用者の意思を大切にしている」(15.8%)、「62. いかなる状況においても、自分自身の感情をコントロールして接している」(11.3%)、「98.利用者にできることをアセスメントし、可能な限り自立した生活を支援している」(11.3%)、「99. 利用者の行動について、その原因を考え、利用者を理解して支援している」(10.5%)が1割以上の回答があった。

カテゴリ別では、「コミュニケーション」「人間の尊厳」「介護過程」という介護の基本となる内容を重視していることが示唆された。この3カテゴリは、(1)いずれも介護福祉士養成における新カリキュラムの重要事項として新設されている、(2)「コミュニケーション」と「介護過程」は介護の重要な方法(技術)である、(3)「人間の尊厳」は介護における価値であることから、今後、介護の専門性を考える上で、有益な手がかりになると思われる。

5)因子分析結果表6

介護福祉士から得た「介護実践過程に関する自己評価」の<ケアの実践の程度>に関する回答を分析対象とした。主因子法による因子分析を行い、調査項目の修正を行った。

因子分析の結果、49項目が抽出され、尺度としての確認を行った。49項目は、「介護の専門性に基づく実践過程」「個別性を理解した生活支援」「共感的関係形成」「個別性を理解した生活支援」「根拠に基づく生活支援」の5因子に分類され、現時点での介護の質の評価指標を確定することができた。

なお、評価項目としては今後さらなる調査を実施し検証していく必要があり、質問項目の文言の見直しなども含め、検討が必要である。

3.今後の課題

今回行われた研究は、介護の全領域についての実施は困難であることから、介護実践場面として、「食事場面」「排泄場面」「入浴場面」の3場面を取り上げたインタビューデータを用いており、限定的なデータの可能性がある。

しかし、全国11箇所からのデータであることや、約2300件のデータから抽出された項目であること等から、調査項目としての一般性は担保できたものと考えることができる。

また、調査対象を介護保険施設と限定したが、障害者施設や居宅介護事業所、認知症グループホーム等、介護専門職の職場は数多い。今後は、職場、対象を限定せずに研究をすすめていくことも必要である。そして今回は、介護福祉士を対象とする研究であったが、今後は、非介護福祉士(介護職)、利用者、管理者等対象の拡大も視野におく必要がある。

本調査はあくまでもプレテストであり、調査対象数も十分とは言えない。今後、対象者数と対象施設の拡大、対象介護場面の検討等課題はあるが本研究を基礎として、今後も研究を蓄積していく必要性は大きい。

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