第1節 介護保険施設における介護福祉士の配置の評価に関する調査
1.調査目的
本調査は、特別養護老人ホームにおいて、介護福祉士の配置の多寡により、サービスの内容・質に差があるのか、また介護福祉士と介護職員(介護福祉士以外)について、施設長からみた評価結果や、それぞれの職種による自己評価結果に違いがあるのかをみるために、全国の特別養護老人ホーム及び特別養護老人ホームに勤務する介護福祉士及び介護職員(介護福祉士以外)に調査を行ったものである。
2.調査対象と方法
・調査対象; | 独立行政法人福祉医療機構(旧社会福祉・医療事業団)の福祉保健医療情報ネットワーク(WAM−NET)事業で登録された全国の指定介護老人福祉施設のうち無作為で抽出した1,000施設(2008年8月末)を対象とした。各施設とも、施設長、介護福祉士と介護職員(介護福祉士以外)を対象とした。 | |||||||||||
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・配布方法; | 郵送配布、郵送回収 | |||||||||||
・調査時期; | 平成20年10月1日 〜 10月31日(金) | |||||||||||
・調査方法; | 施設票1部と介護職員票6部を郵送した。介護職員票は個別封筒にて封をした後、施設に手渡し、各施設分まとめて返信用封筒にて回収を行った。 |
3.調査内容
- 調査票は、「施設票」と「介護職員票」で構成。
- 「施設票」は、施設の概要、職員体制、職員の雇用・退職の状況、職員の研修の状況、介護職員の業務展開過程に関する評価を調査内容とした。
- 「介護職員票」は、基本属性、勉強会・研修への参加状況、介護福祉士の資格保有について、業務展開過程に関する自己評価、介護の知識・技術に関すること、職場について、仕事に関する感じ方を調査内容とした。
- 「施設票」は、施設長に回答を依頼した。
- 「介護職員票」は、施設に勤務している介護職員の中から、無作為に介護福祉士有資格者3名、介護職員(介護福祉士以外)3名を抽出し、回答を依頼した。
4.回収状況
- 施設票は、337事業所から調査票を回収(有効回収率33.7%)。
- 介護職員票は、1,910票を回収。
対象数 | 回収数 | 回収率 | |
特別養護老人ホーム | 1,000箇所 | 337箇所 | 33.7% |
介護福祉士 | 3,000人 | 1,094人 | − |
介護福祉士以外の介護職員 | 3,000人 | 816人 | − |
第2節 特別養護老人ホーム施設長へのヒアリング調査
1.ヒアリング調査の目的
ヒアリング調査は、第1節で示した調査結果の内容的な補完を意図し、特別養護老人ホームの施設長が、日常の業務を通して、「介護福祉士の資格の有無による違いをどのように見ているか」、また、「介護職員には何を期待し、仕事の評価の視点はどこにおいているか」について具体的な内容を把握、検討することを目的として実施した。
2.調査対象と方法
・調査対象; | 全国10箇所の特別養護老人ホーム(従来型)施設長10名 (東北地区・関東地区・中部地区・北陸地区・四国地区・九州地区の特別養護老人ホームで協力が得られた施設長) |
・調査方法; | 半構造化面接 面接は各施設ともに同じ方法で実施した。対象者には、文書で事前に調査を依頼し、不明な点についてはいつでも質問可能とした。さらに、事前に電話連絡にて日程調整および面接の趣旨や内容を伝え、各施設2名で訪問した。 |
・調査時期; | 平成20年11月1日 〜 12月31日(金) |
3.調査内容
- 第1節で用いた「施設票(質問紙)」と、施設の理念および方針、職場で求める介護職員についての質問内容で構成された「ヒアリング調査票」に事前に記載を依頼した。
- ヒアリング調査票に基づいて「介護福祉士資格の有無による違い」と「職場で求める介護職員」を中心とする内容のヒアリングを行った。
4.倫理的配慮
倫理的配慮として、協力者に対しては、研究の目的、方法、秘密保持について、文書に基づく口頭での説明を行った。また、ヒアリング内容をICレコーダーで録音することは協力者の承認を得た上で行った。
5.ヒアリングの分析方法
(1)分析方法1
「施設長が介護福祉士の資格の有無による違いをどのように見ているのか」を分析するために、対象者が事前に記載した(1)「施設用質問紙」(2)「ヒアリング調査票」及び(3)調査者が面接後にまとめたヒアリング内容の3種類をデータとして用いた。さらに、(1)(2)(3)を統合した形で10箇所の調査者が報告書としてまとめ、それを分析データとした(資料1参照)。そして、データから第1節で用いた「業務展開過程」の9領域に対応する記述を抽出し、類似する内容についてコードネームをつけ、整理した。
(2)分析方法2
「施設長が介護職員には何を期待し、仕事の評価の視点をどこにおいているのか」を分析するために、対象者に行ったヒアリングを逐語化し、データとした。そのデータに密着し、協力者の語りの文脈に着目した。そして、次のプロセスで分析した。
- 施設長は、「介護職員の仕事の何を基準に評価しているのか」を含む文章が含まれている文脈単位(仕事の評価に関連する思いや考えが記述されている回答全体)96件を抽出した。
- 1.の文脈単位を記録単位(「介護職員の何を見て評価しているのか」について記述を1つ含む文章をコードとして抽出し、142件が抽出された(資料2参照)。
- 類似した意味内容のコードを集めて、カテゴリ、サブカテゴリ化を行った。その結果、カテゴリ9件、サブカテゴリ37件が抽出された。
- 次に類似した意味内容のカテゴリを集めて、大きく≪ネットワークづくり行動≫≪スキル開発行動≫≪主体的なケアデザイン行動≫の3領域に分類した。
カテゴリ作成にあたっては、主観的にならないように、委員長を含む7人の委員で検討した。